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『Gloria in excelsis deo』 黒巣市A.D.2026−Act III |
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Master Scene 「遠い昔日」 |
ScenePlayer:−−/場所:黒巣市/時刻:17 years ago/登場:不可 |
からんころん。
緩やかに風が部屋を訪れては、小さなベッドの上に吊られた飾りを鳴らして通り過ぎる。
“ぼく”は、部屋の外からずっと眺めていた。
小さなベッドの上で眠る、小さな小さな“ぼくの妹”を。
金切り声。
突如、強く頬を打たれた反動で、戸口に肩を打ちつけた。
「…――に、触らないで!」
その大きな音よりも、頬を打つ痛みよりも、
“お母さん”の、その言葉が、深く“ぼく”の胸に刺さった。
――“ぼく”は“病気持ち”だ。
だから“妹”にさわることも近づくことも許されていない。
明日、お医者さんが、病気を治すために“ぼく”を引き取るらしい。
けれども、別れる前にもう一度くらいは“妹”の顔を見ておきたかった。
…でも、やっぱりがまんしようと思う。
“ぼく”の病気をうつしちゃダメだから。
この病気が治れば、“お父さん”も“お母さん”も
「おかえり」って、笑顔で“ぼく”をむかえてくれるだろう。
この病気が治ったら、“妹”と二人で、手をつないでさんぽに行こう。
それとも、ままごとのほうがいいかな。
“おまえ”は小さいから“ぼく”のことがわからないだろうけど、
“ぼく”は、必ずもどってくるよ。
“お兄ちゃん”が“おまえ”を守ってあげるからな。
――からんころん。
小さなベッドの上で、モビールが風に揺られてくるくると回る。
逆さまに回っても決して戻る事はない刻。
遠い、昔日の出来事。
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DOUBLE+CROSS THE 2nd EDITION |
「『Gloria in excelsis deo』黒巣市A.D.2026−Act III」 |
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