『betrayers』 黒巣市A.D.2026−Act III+
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 Ending Phase-01 「遠い朝」
 ScenePlayer:“逆位置の太陽” 津嶋 皓/時刻:30日/場所:UGN支部/登場:自由

GM: “EverybodyOne”の脳を圧迫していた異物──膨大な記憶は、彼の死によって解放された。
GM: 遠い過去、近い過去に見ていたものと変わらず
GM: ベッドの上に横たわる愛想の欠片も無い仏頂面は、ともすれば凪いだ湖面のように穏やかにも見えた。

 小波一つ無い水面に石を投じ、甘受した死に抗わせる。
 彼は戦いを望み、困難に挑み続けてきた。
 自らを高め続けるため。太陽に手を伸ばすために。
 そして、その姿…背を、自分はずっと見続けてきた。
 ――だが。
 ふと、思うこともある。
 “それは本当に彼の望みだったのだろうか”と。
 そうせざるを得なかっただけで、彼が望んでいたのは自身の“無”ではなかったのか、と。
 それでも、今。
 選ぶのは彼ではなく、自分だった。
 その矛盾と罪悪感に、平常心は遠い。

GM: 蘇生作業が間もなく始まろうとしていた。
GM: 掬い上げた生命を、再びこぼれ落ちる前に繋ぎ止めるために、
GM: 横たえられた身体には、電子計器に接続された幾つもの管と検査針が差し込まれている。
在家: 「──痕になっちゃってる古傷があるね。皓、気づいてた?」
皓: 些か遠い目でその姿を眺めていた、その矢先にかけられた声。
GM: いつの間にか姿を消していた彼女だったが、彼女は約束を守るつもりのようだ。
在家: 「生きてるサラマンがこうなってるの見るって、滅多に無いんだけど…」
皓: 「……ぇ?」それに、小さく首を回し。再度、見て。
GM: 戦場で対峙していた時には気づく余裕も無かったが、
GM: ちょっと目には分からない程度の軽微なものから重度のものまで
GM: ケロイドとなった火傷の痕は、ほぼ全身を覆い尽くすように広がっている…と彼女が告げた。
皓: 「……」無言のまま、その疵を見た。
在家: 「コレって、いつできたのか知ってる?」
皓: 微かに首を振るも。
皓: 「……あの人は……」ぽつり。呟く。
皓: 「自らを自らの炎で、焼き尽くすことを望んでいたのかな」
在家: 「あー…………」つい先程見たばかりの何かを思い出して、複雑な表情を浮かべる。
皓: 「……どうかしたのか?」
皓: その様子には、声をかけ。
在家: 「いやほら…怪獣大戦争……」(何)
皓: 「………………」それには微かに天を仰いだ(何)
在家: 「……あるいは、記憶を失う原因だったのかもしれないけど。まあわかんないよね」咳払いをして。
皓: 「俺は別に、鳥越さんのことを全て解っている訳じゃない」
皓: 「今だって……本当は彼がこんなことを望んでいたのかどうかなんて解らないよ。……ただ……」
在家: 「…ただ?」
皓: 「……悔しいじゃないか」
在家: 「超える機会を失ったってコト?」
皓: じ。と、その姿をみつめ。些か口調が変わる。
皓: 「それもある。けどさ」
皓: 「憧れの対象が、あんな風に無様にいなくなるって事が……」それに何かに気づき、言葉を切り。
皓: 微かに首を振った。
皓: 「──ともあれ、だ」
在家: 「ん」
皓: 「俺はまだあの人に勝ってない」
皓: 「この拘りを、何とかしてもらうまでは、自分の前を進んでもらわないとやりきれない」 ※1
皓: ふい。と目線を逸らし。態と子供っぽい論理を告げた。
在家: 「男の子ってのはムズカシイものだねえ」あははと笑って、白手袋を外した。
在家: 「じゃあ、やるよ。計器のチェックよろしく」
皓: ああ。と頷き。「信用してるよ。在家さん」
GM: 鳥越の額に素手で触れ、目を閉じる。
皓: 計器と、その彼女の様子と、それを受ける相手を眺め見て。
皓: ただ、祈る。──どうか……と。
GM: その彼女の姿がゆっくりと薄れてゆく。 ※2
GM: ぱさり、と。軽い音がした。
GM: 次いで、計器の数値が突然跳ね上がり、ラインが波打つ。
GM: 数値が平常値に戻り、ブザーが鳴りやんだ時には
GM: 彼女の姿は無く、黒いレインコートと白手袋が小さな水溜まりの中に落ちていた。
皓: 「……在家、さん?」
GM: 返す声は無い。
皓: 呆然と呟き、我に返り。床に落ちたレインコートに走り寄る。
皓: 「在家さん、何処に……!?」それを取り上げ、小さくも声を荒げた。

GM: ──鳥越劉斗が目覚めるまで、どのくらいかかるかは分からないと在家は言っていた。
GM: 明日目覚めるかもしれない。あるいは何週間、何ヶ月か先か。
GM: そして目覚めたとしても、彼が拒絶し続ける限り、記憶は彼に戻ることもないだろう、とも。 ※3
GM: 彼女の言葉が幻聴のように、無人に等しい室内にこだました。

皓: 「……」重い息を吐き、コートを取り上げ、傍の簡易椅子に放り投げた。
皓: 次いで、ベッドに横たわる彼を見る。手を伸ばし、触れる脈に、心から安堵した。
皓: 「鳥越さん」
皓: 「……謝るのは、貴方が起きた時にします」
皓: 「今は、生きていて良かった。──殺すことがなくて、良かった……って」
皓: 「自己満足でしかないでしょうけど。……そう思わせてください」
皓: 笑う。昔と同じ。彼に、“あいつ”に見せた些か困ったような笑顔で。一礼し。
皓: 「──今度こそ。貴方に勝ちますから。僕は」
皓: 「それまでは必ず。先に進み続けてくださいね。劉斗さん」
皓: 告げた言葉は力強く。
皓: 見据える目は、ただ先へと。



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 DOUBLE+CROSS THE 2nd EDITION
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