『betrayers』 黒巣市A.D.2026−Act III+
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 Ending Phase-04 「明日」
 ScenePlayer:“鉄衣の剣舞” イブ/時刻:31日/場所:スラム街/登場:要許可 ※9

GM: 復興の槌音が高く響くスラム街。
GM: 日常を再開するため、忙しなく人々が行き交っていた。
イブ: 宛もなく歩いた。おぼつかない足取りと、病人のように青ざめた顔のまま。
GM: 青ざめた顔で歩くイブに気がついた者は無く。皆、作業の手を止めようとはしなかった。
イブ: その活気から拒絶されたように、足は人気のない脇道へ向く。
??: 「──よ、イブたん。元気してるかい?」
GM: 後ろから、不意に掛けられた。 ※10
イブ: 声にビクリと立ち止まる。
GM: 声の主は、ひらひらと白手袋をはめた手を振る。
GM: 笑顔。そしてもう片方の手にはビニール袋。
イブ: 俯いた途端、服に着いた比較的新しい血の汚れが目に入って、振り払うように振り返った。
在家: 「なーんか元気ないね。どうしたのかな?」
GM: ビニール袋をぷらぷらと揺らしながら小走りに近づき、ぽんと肩を叩く。
イブ: 「あんた……。」数時間ぶりに出た声は思ったより掠れていた。
イブ: そういえば、随分何も口にしていないような気がする。
イブ: 「在家……さん、だっけ…?」
イブ: 肩に触れる手から逃れるように少し身を引き。
在家: 「……ん? どしたん、その微妙にバツ悪そげな顔」
在家: 「就業時間後の『おふぃーすらぶ』でも目撃したのかい? んなワケないじゃん」
GM: 近所のおばちゃんのような仕草で手を振って否定した。
イブ: 「………。」どうすべきか。先日目撃した光景に、気を許すつもりにはなれなかった。
在家: 「こっちおいでよ。風、冷たいっしょ?」
GM: 手招きして、先に乾いた瓦礫の上に座る。
イブ: 「…なんか、用……?」
イブ: 手招きに、一応そちらへ近寄り。立ったまま彼女を見る。
在家: 「なんか死にそうな顔してたから声かけてみた。──食べる?」
GM: がさもそとビニール袋を空ける。油紙の中にくるまれたたい焼き三つ。 ※11
イブ: 「………いらない」
在家: 「…そか」再びがさもそと袋に戻して。
イブ: 好物なはずのそれも、今は嫌な思い出しか呼び出さなくて、弱々しく首を振る。
GM: 狭いスペースの隣を手で叩いて、こっちにおいでと手招きをする。
在家: 「言ってみ? 当事者じゃなくても、話してみれば少しはラクになるかもしれないよ」
在家: 「なんかいろいろあるんでしょ」
イブ: 「………」黙ったまま、隣に座る。
イブ: 「記憶、がどうとか言ってたよね。あの時」
在家: 「うん」
イブ: 「皓の記憶も読んだ?」やっぱ気づいてたのかな、と。 ※12
在家: 「うん」また頷いた。
イブ: 「俺が…“誰でもない誰か”を殺した時も、いたよね。あんた」
在家: 「うん」同じように頷いて、
イブ: 「じゃあ、俺が何をしちゃったのか、分かってるんだよね。」
在家: 「でも、しょうがないことなんじゃないかなとあたしは思った」
イブ: 「……しょうがない?」
在家: 「どうしようもない状況に陥っていた。身動きも取れない状態に。三人ともね……あ、いや。ちょっと違うか」
在家: 「あの時。打開する方法、他には無かったんじゃないかな」
イブ: 「俺、あいつに…親代わりだったやつを殺されたんだ。だから、復讐したいと思ってるって…思ってたんだ」
イブ: 「でも、そうじゃなかったのかな…。」
在家: 「イブたん」
イブ: 言葉を切って、俯いていた視線を在家に向ける。
在家: 「……イブたんは、独りぽっちだもんなあ」
GM: 瓦礫に腰掛けて、ぷらぷらと脚を振る。
在家: 「今まで一緒につるんでたのが居なくなって」
GM: ガタイの大きいイブの頭を、よしよしと頭を撫でる。 ※13
イブ: きょとん、とその顔を見る。
在家: 「話をしようか。キミがよく覚えてないキミのコト」
イブ: 「覚えていない、俺?」首をかしげるものの。
在家: 「“運命の剣”……とか。知ってても、よく分かってないでしょ?」
イブ: 「………」頷く。
イブ: 「それから…」
イブ: 「俺の中にいる、誰かとか…」
在家: 「ん」
イブ: 「分かんないことばっかり…」
GM: 頭を撫でくりつつ。
在家: 『……蒼太は。イブを、どう思ってるんだい?』 ※14
イブ: 体を小さくして、素直に撫でられる。
在家: 『――好き? 嫌い? それ以外? それとも両方?』
在家: 『伝えてあげて。言葉をかけて。届くよ、キミ達は元々同じなんだから』
GM: 子守歌のように心地よく響く。
イブ: 「俺は――」
イブ: 『俺は、おまえがしたくないことはしない。』
イブ: 『たったひとつを除いてだけど、な。』
イブ: 『でもお前のことは、嫌いじゃないさ』
イブ: 『お前は、俺達の先にあるものだから』
イブ: 『お前の邪魔は、なるべくしないよ。お前が生きたいように。』
イブ: 『ちょっとここんところやりすぎたけど反省はしてない』(何)
イブ: 少しだけ遠くなった目。唇も動かさずにそう告げる。
在家: 『ちょっとだけはやっておこーかー』そこだけは軽く突っこんで。
在家: 「──イブたん。聞こえた?」
イブ: 「………え、と。…うん」
イブ: 何度か瞬きをしてから、慌てて頷く。
イブ: 「今のが?」顔を上げて在家に。
在家: 「うん。キミがよく覚えていないキミ。キミを好きなキミ」
イブ: 「なんか思ったよりいい加減なんだね」(何)
在家: 「まあそう言うなよ。こういうのは、やってみると案外拍子抜けしちゃうモンなんだしさあ」(何)
イブ: 「よくわかります」(何)
在家: 「『……辛い目に遭ったんだね』」“両方”に対して声をかける。
イブ: 「“……うん”」
GM: 両手でイブの躰を抱きしめて、背中をぽんぽんと叩く。
在家: 「……あたしもね。ちょっと身につまされる」
イブ: なんとなく戸惑ったように声を聞く。
在家: 「あたしには双子のアニキがいたんだけど、辛いコトとかイヤなコトとかぜーんぶ押しつけちゃってきたんだ」
在家: 「あたしもそれで平気でいたってワケじゃないけどね」
在家: 「だからといって何かができるってワケでもなかった…まあ、言い訳なんだけど」
在家: 「…どう思ってんだろうな。あたしのコト。昔は、ものすごーく怒ってたってのは知ってるんだけど」
在家: 「でも今は――もう、分からなくなっちゃったよ」
GM: ぎゅっと手に力を込める。弱気な声を気取られまいと。
在家: 「姿は見えるのに…何を考えているのか、何処に居るのかも、もう、分からないんだ……」
イブ: 「……寂しい、ね。」
在家: 「うん。ちょっとは」
イブ: ほんの少し前になる過去の、誰かを思いだして。ずっと、どこか違う所を見ていた目線を。
在家: 「──ありがとうね」
在家: 「話を聞くつもりが、話を聞いてもらったみたい」躰を少し離して、照れ隠しに笑う。
イブ: 小さく首を振る。
イブ: 「いいよ。俺も話したら、楽になった。」
イブ: 同じようにかすかに笑って。
在家: 「そか。それは良かった」体の後ろに手を付いて、脚を振り子のように揺らし、反動で軽く跳ぶ。
在家: 「お腹すいたね…なんかおいしいモンでも食べに行く? W7以外で」
イブ: 「……奢ってくれるならいーよ。俺、今何にも持ってないから。」ぷらぷら、と手を振ってみせる。
在家: 「おっけー。あ、おサイフ取ってくるから先行ってて。すぐ追うしー」
イブ: 「ん。ばっくれても探せないからって、消えないでよね」
イブ: ようやくちゃんと笑って。立ち上がると路地を歩き出す。 ※15
イブ: やっと、“ここ”へ戻ってこられたような気持ちになって。
在家: 「あたしの情報網なめんなよ」笑って手を振る。
イブ: それに後ろ手で手を振りかえし。
イブ: すぐに心はまとまらないだろうけど、でも。今はこうしていようと思った。
イブ: だって、いつかは。どっちにしろ。
イブ: そうして、道を曲がって姿を消した。


 「…見ているんだったら、そのままで聞きなさい――亮」
 在家のものだった声色が、低く穏やかに響く。
 「お前は先代に仕え、先代を守れず死に場所を失った。生きてゆくための居場所も無い」
 「だからこそ“彼”を気にかけた」
 「彼を利用し、“火鷹”を試そうとするのは勝手だが、天に弓射る事は止めた方がいい」 ※16
 「お前の放った矢はお前へと返らず、傍らにいる者を射殺すのみだ」
 手を翳し、指し示す。冬日に照らされながら先へ行ったイブの背へと。
 「…そして、失い続けた者のみが継ぐ。陽と月と、永遠の孤独を」
 「――物資の運搬ご苦労だった。戻り、災害報告を行うといい」

GM:  “なにやってんのー?” と。路地の陰から、ひょっこりと顔を出して、イブが叫ぶ。
GM:  “わかってるってば” と。フードを引き上げて、在家は手を振って別の路地へと急いだ。

  物陰に佇つ男は、礫を踏む。
  かつては形あったモノ。
  今は砕けて用を失くしたモノを。
  屈み、拾い上げ、手の中で弓と成して矢をつがえる。
  二つの背を交互に。
  あるいは真上に構え、中天へと。
  「───」
  狙い定まらぬまま、引き絞る。
  放たれた矢は、弧を描いてビルの谷間へと消えた。



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 DOUBLE+CROSS THE 2nd EDITION
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